先月の16日に、舞岡公園近くの虹の家へ写真展を見に行ったとき、「3月14日にギフチョウが飛びました」との情報を貰った。
今年は気温の推移が例年通りでなく、様子見しているうちに家内の具合が悪くなり、出かけられないまま4月になってしまった。
少し回復したようなどで、それとなく藤野行きを伝えると即答でOKが出た。
2年ぶりにギフチョウに会えると思うと、何時もより早く眼が覚めた。
起きたらさっさと身支度を整え、海苔弁を作って予定より30分以上早く家をでた。
高速に上がってもまだ眼が覚めきっていない感じだが、自動運転のスイッチを入れてあるので安心だ。
藤野へは通い慣れたルートだから、順調に走って藤野の里の駐車場へ到着した。
巣箱風の料金箱が新しくなっていると思ったら、駐車料金も上がっていた。
隣りの車も着いたばかりなのか支度中で、あいさつを交わして山靴に履き替える。
木陰を抜けると明るい里山の景色がひろがる。
ここから奥がギフチョウの聖域で、サクラ、ミツバツツジ、ナシ、レンギョウ、キブシなど色とりどりの花が咲いている。
すでに何人かのカメラマンがギフチョウの出現を待っている。
通りすがりに挨拶しながら情報交換をするが、時間的に早いのかまだ出ていないようだ。
ギフチョウはアゲハチョウの仲間だから蝶道を作るので、石砂山(いしざれやま)の登山口を過ぎてから400mほど奥へ行き、太い倒木に腰掛けてそれを見張ろうという訳だ。

奥のほうに写っている石砂山の稜線から降りてきたギフチョウが、この杉の木のV字の間から出てきて左側へ飛んで行く蝶道がある。
好天に恵まれ強い日差しに当たりながら、1時間ほど待った。
待ちながら、時々立ち上がって虫達を撮る。

越冬明けのヒオドシ

テングチョウ これも越冬明けだ。

ビロードツリアブ
とがった細長い口吻が特徴だ。

セスジナガカメムシ
初撮りで、カメムシ大好きオヤジを喜ばせた。
活動始める時間をだいぶ過ぎても、一向に出てくる気配がないのでシビレを切らして腰をあげた。
登山口付近まで戻って様子を聞くと、さきほど1頭飛来したという。
それではと、この辺りをウロウロすることにした。
待つこと暫し、向こうのミツバツツジのほうで何人かが動きだしたので、早や足で近寄って行く。
肩越しでは良く見えないので、植え込みの向こう側へ回り込んだら運よく目の前に現れた

今シーズン初撮り、今年も春の女神に出会えた。
その後、細い沢沿いの斜面を飛んで行くギフチョウを見送る。
周囲の様子を見ながら200m位の距離を何往復かしたとき、このサクラの木にいま来ましたよと教えてもらったが、もう姿はなかった。
そろそろ引き上げようとゆっくり戻りかけると、撮れましたかと話しかけられた。
しばらく立ち話していたら、目の前の杉林から突然現れた。

羽化直のきれいな雌。
氷河期の生き残りのチョウには気温が高すぎたし、雌が出て来たということは発生のピークを過ぎているようだ。
周りの山の様子。


忙しく過ごしているうちに、芽吹きのきれいな時期になっていた。
駐車場にもどって、こののどかな里山風景を眺めながら海苔弁を食べる。
久しぶりにゆっくりした時間を持てたので、リフレッシュして帰宅した。
先日、放蝶と思われる新潟県産のギフチョウが狭山丘陵にいるという記事を読んだ。
狭山丘陵はMFなので、食草のカンアオイが保護されて、どこにあるか良く知っている。
カンアオイは10m移動するのに100年以上かかると言われているので、各地の狭い範囲で独自に進化してきた地域性の高い植物だ。
それはミヤコカンアオイ、サンヨウカンアオイ、カントウカンアオイ、コシノカンアオイ、タマノカンアオイなど名前を見れば想像がつく。
それ故、江戸時代には微妙な違いを愛でるカンアオイブームがあったようだ。
中国地方のギフチョウは、瀬戸内海沿岸はサンヨウカンアオイで育ち、60キロほど離れた中国山地のものはウスバサイシンで育つ。
これを逆にすると育たないと高校の生物の先生から聞いた。
それぞれの地方で独特な食生活をしてきたギフチョウは、食餌植物に対する偏食性が強く、地元産のものがベストで他産地のものは全く食べなかったり、食べても生存率が低い。
だから狭山丘陵に自生しているカンアオイで繁殖できる可能性は極めて低いだろうとこの記事を読んで思った。
posted by massy at 01:37|
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