式が終われば、藤岡IC〜佐久IC間が供用開始となる。
私は横川SAで前日から仕事をしながら、道路の開通を待っていた。
その日は朝から晴れて南風が強く、式典会場のテントが飛ばされないか、関係者が気をもんでいた。
横川SA付近は周囲を山に囲まれているが、風向きによっては山に当たった風が道路沿いを強く吹き抜けるからだ。
そんな関係者の心配をよそに、横川SAの下り線側から上り線側のエリアを眺めていた。
サルが出没する地域なので、つるつるに表面加工した高いフェンスでエリアを囲ってあり、その背後にはすぐ山が迫っている。
その山の全体が杉林だ。
気温が上がってくると、南風にあおられた杉林から、黄色い粉をぶちまけたように花粉が飛び始めた。
これ以降、あんな量の花粉は見たことがない。
ちょうどその頃、式典に出席するべく、花粉症持ちの部長が東京から到着し、会場の方へと向かった。
この状況ではあとが大変であろうと思いながら、後ろ姿を見送った。
暫くして、テープカットが終わったのか花火が打ちあげられ、道路が開通した。
関係者が大勢戻ってきたので、そろそろ一般車両の通行が始まるなと思っているところへ部長が戻ってきた。
心配した通り、目のふちを赤くし、タオルで鼻をしきりに拭いている。
クシャミを連発し、声は鼻声で、まともに話ができない。
私は花粉症と無縁だったので、花粉症にはなりたくないと思ったし、仕事とはいえ、こんな所まで来てお気の毒にと同情した。
部長は東京へ戻ってからも、1ヶ月ぐらいはタオルを手放せなかった。

上信越自動車道 下仁田IC付近 もう少し行くと、妙義山の奇景が見えてくる。
本線に車が流れ始めたが、半数以上はエリアへ入って来る。さすが横川の知名度は高い。
横川といえば釜飯であるが、販売は上り線のエリアのみで、下り線のテナントでは扱っていなかった。
下り線のSAへも釜飯を期待してくるお客様が沢山いたので、販売していない旨を説明し、納得してもらうのに苦労した。
そこへ、「1キロくらい手前でサルがはねられています」と女の人が飛び込んできた。
これが、上信越自動車道の交通事故 第一号だった。
3月の今頃になると、こんなことを思い出す。